政務調査費の裁判例
   



研究研修費

飲食を伴う会合    飲食を伴う会合の支出は、一般に 「議員の調査研究に資するもの」 として必要でない、と推認される。
議員の会合の昼食代金    社会通念上、会議費 あるいは 調査費として支出するのが相当である。
飲食を伴わない会合     政務調査以外の目的が疑われる場合においては、調査研究活動であることを具体的に主張立証しても、それが不十分である場合には、当該支出は違法と判断される。
政党活動等との関係    一般論としては、具体的な内容が調査研究活動に適うものか否かによる。
  特段の事情がない限り、調査研究のための必要性に欠ければ、違法。 
他人の費用の負担    特段の事情がない限り、調査研究のための必要性に欠けるものであれば違法なものと判断される。
団体等会費    政務調査以外の目的が疑われる場合、調査研究のために必要であることを具体的に主張立証して不十分である場合には、当該支出は違法と判断される。
  市政に関する情報が得られる等の副次的効果については、主張立証としては不十分である。
 



調査旅費

 遠距離視察費   「遠距離視察」 の経費は、合理的に制限する傾向にある。
  「視察目的の合理性」 と 「視察態様の相当性
」 の両面から判断したり、詳細な判断基準を設けて判断しようとしている。いずれの判断基準についても、議員の主観によるものではなく、客観的に判断しようとする姿勢が顕著である。 
 ガソリン代   ガソリン代を政務調査費から支出できる限度が2分の1であるという認識は、すでに全国的に定着している。 
高速料金  仙台高判 H19. 12. 20
   「調査目的などの説明はなく、政務調査活動との関連は明らかでないから、十分な説明がなされているといえない」 ので、使途基準に合致しない支出と認定した。



資料作成費 ― ≪ 印刷製本費

仙台高判 H19. 4. 26    「領収書の記載からは政務調査活動との関連性が明らかでなく、これを補足する説明もされていない」 ことを理由に、使途基準に合致しないと判断している。
  「政務調査活動との関連性は常に説明されなければならない」 という一般原則に即する。
 
仙台高判 H19. 12. 20    議員が 「市民などに議員として活動を報告するために開いた市政を語る会で使用した」 資料の印刷製本費用につき、「政務調査活動というより、むしろ、その他の議員活動に基づいて支出されたものといわなければならず、全額、本件使途基準に合致しない支出である」 と認定している。
◎ 「市政報告会は政務調査以外の面も持っている」 ことを指摘する −−−【 要 注目
 



資料購入費

 週刊誌・雑誌 一般論として、「海外ガイドブック、旅行雑誌、スポーツ新聞、クラッシック演奏会に関する情報誌、鉄道雑誌、情報雑誌、植物に関する書籍等は、いずれもその図書名及び内容からして、一般的に個人的な趣味・興味の範囲に属する読み物であることが明らかであるから、娯楽性が高いものであるというほかはない。そうすると、これらの購読が市政に、直接、かつ、具体的に関わるような特段の事情があることを被告が主張立証しない限り、当該資料の購入が市議会議員としての政治活動全般に必要、有益な資料でないことが明らかであると認めるのが相当である。 
政党機関紙等
政党刊行物 
政党発行物の購入費に関する判決例は、肯定例と否定例が併存する状態で、いまだ判決例の流れが確定するに至っていない。
福岡地判 H25. 11. 18
  「自らの所属する政党の政党雑誌や政党新聞を購入する場合」 は、特段の事情がない限り、社会通念上、政党活動と同視すべき活動に当たるというべきである」 と判断し、支出全般を違法とした。



広報・広聴費

 「 市政懇談 」 の経費 仙台高判H19.4. 26 /   仙台高判H19. 12. 20
  「市政報告会」 が政務調査の側面をもっていることを否定するものもあるが、 「市政報告会が政務調査の側面も持っている」 ことは注目に値する。 
 広報紙印刷・配布費 議員・会派の広報紙の作成・配布費用について、< その配布内容を前提事実として、費用の全額を政務調査費から支出することを否定し、現実の記載内容に応じて按分支出のみを認める > 方向で定着しつつある。 
HP作成費・維持費    HPの開設・維持について、「原則として50%の按分支出のみを認める」 という趨勢にある。
和歌山地判 H25. 1. 29
同時期に複数のプロバイダへインターネット接続料金・プロバイダ料支払事例において、1社を超える部分の支払金額を違法とした。
 
 集会の特殊費用 ≪ 横断幕 大分地判 H23. 2. 24
   「議員の広報・広聴活動の経費は全部を政務調査費の支出として認めるのではなく、政務調査費として合理的な範囲でのみ認める」 という判決例の一部をなすものである。
切手・ハガキ代金     「議員の広報・広聴活動の経費は全部を政務調査費の支出として認めるのではなく、政務調査費として合理的な範囲で認める」 という判決例の一部をなすものである。
 福岡地判 H25. 11. 18
   切手の大量購入事例において、「的確な反証がない場合には、当該支出には目的外支出が混在すると推認されると解すべきである」 と判示し、切手大量購入の50%を違法とした。



人件費

   人件費の分野では、早くから、按分支出を命じる判決例が蓄積されており完全に定着している。 
  中でも

  @青森地判H22. 3. 26 の 『 「視察調査の資料整理、新聞記事の切り抜き整理などを行わせ、これに基づき市議会でも一般質問や政策提言等の活動を行っていた」 のであれば、専ら政務調査活動に係るものであるとはいえない』 という判断、
  A 大分地判 H23. 2. 24 の 『議員控室の職員に対する人件費も2分の1の割合で按分すべきだ』 という判断、

  B 名古屋高栽金沢支部判 H25. 7. 3 の 『議員らの、「職員は調査研究活動以外の議員活動又は私的行為には従事していなかった」 旨の陳述は裏付ける客観的な証拠がなく陳述によっても、「通常は渾然一体となって行われる調査研究活動とそれ以外の活動を峻別して、同職員からの労務提供を受けていたかは判然とせず、外形的事実による推認を覆すには足りない」 』 として、按分率50%を超える支出をしたこと
が重要である。



事務所費

 正常な賃貸借関係の賃料 @ 地方議会議員の活動が多面的であること
A
調査研究活動と他の議員活動とを区別することは一般に困難であること
B 一般に議員事務所においては政務調査活動とそれ以外の議員活動が行われ、それを区別することは困難であること
C その前提のもとに、事務所賃料については按分支出を原則とする
 
按分比率については2分の1とするものが多いが、他の団体等の同居状況によってはさらに低率の按分が認定される
    すでに定着したものと評価することができる。
 非正常な賃貸借関係の賃料  @ 議員自身もしくは同居の親族に対する支払
A 議員が代表者である法人に対する支払は全面的に否定され、
B 議員の同居の親族が代表者である法人に対する支払は、否定するものが多いが、肯定するものもある、という状況である。
@、Aについての判決例の傾向はすでに定着したと言えるが、Bについてはまだ若干の流動性を残している。
  議員側において、上記特殊な関係がある場合であっても、政務調査費の支払が議員に対する支払と同視されない特段の事情を主張立証した場合には正常な賃貸借関係に準じた按分支出について判断される
事務所光熱水費      「賃貸事務所の光熱水費は事務所賃料と同じ按分率に従う」 という取扱いが定着している。 
   非賃貸事務所の光熱水費を政務調査費から支出する例は多くないが、大阪地判 H 19.12.20 の判示は参考となる。
  「一般の議員活動にかかるものは自宅全体にかかる光熱費、水道代、電気料金等の維持管理費の3分の1を超えるものではなく、政務調査費をもって充てることが許される市政に関する調査研究活動にかかるものは上記部分の更に3分の1を超えるものではない」



事務費

固定・携帯電話
FAX料金 
   固定電話・ FAX料金は賃貸事務所の場の2分の自宅兼事務所の場合の2分の1、自宅兼用事務所の場合2分の1携帯電話は全額否定する判決例もあるが、 2分の1 〜 3分の1 が 趨勢である。
 インターネット料金   電気気料金についてはとほぼパラレルに50%案分」 を求める判決例が支配的である。
事務機器購入・リース料   賃借事務所については按分率2分の1を基本とし、兼用する団体数が多い場合はより低率の場合もあり、住宅兼用の場合は2分の1〜3分の1とする。 
事務機器購入・ランニングコスト     判決例が少ないため、全例が2分の1となっている。 
 事務用消耗品費   判決例が少ないため、全例が2分の1となっている。
TV受信料  熊本地判 H22.3. 26 「反証されていない」
盛岡地判 H22.3. 26 及び 仙台高判 H22.11. 19 は、「半額」
 
 その他  ・ 名刺印刷費 「 2分の1 」
 ・ 観葉植物リース料、花苗代、常備薬代、テッシュ代、ケトル代、加湿器代等 「反証があったと認められず」
 ・ 高額支出 「反証があったと認められず」
 ・ 多数の支出 「過度の高額」


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 事務所賃借料及び自動車リース料は、 本件条例にいう「事務費」に」、
   
政務調査費の支出対象として想定されていなかった 」 ・・・名古屋高判 H27.12.24 ●●




 
政務調査費の外枠は  全国一律に定まっている 

 政務調査費を充てることができる範囲は、現行法と異なり、条例の定めに委ねていないのであるから、法の定める「議員の調査研究に資するため必要な経費」に限定されるというほかはなく、各地方公共団体の条例によってこれを狭く限定することは許されるものの、拡大することは許されないのであって、いわばその外枠は客観的に全国一律に定まっているということができる。

名古屋高判 H27.12.24




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